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ベヒシュタイン A190との3年(ピアノスタジオ主宰:田村千恵美様)


2004年4月、待ちに待ったピアノが、スペース オブバイフォーの1階スタジオにやってきました。以来、主にアコースティック楽器の練習・録音・ミニコンサート会場として利用していただいている空間で、このドイツ生まれの新しいピアノは多くの方々に出会い、大切なひと時の音楽のパートナーとして美しい音を奏でてくれています。最初の半年は、その新しさと不慣れな環境が重なったせいか、音がなかなか落ち着かず調整や調律を頻繁に行い、湿度管理に気を配り、まるで初めての赤ちゃんと向き合う新米ママになった気分でした。だいぶ慣れてからは、ピアニストの要望で鍵盤やペダルのタッチ、音色を調整したこともありますが、ほとんどの場合オリジナルの状態でのバランスの良さを再認識させられました。つい数ヶ月前には、原因不明の金属的な雑音が発生して工場での整備が必要になりました。もちろん今はスタジオの定位置で、何だか貫禄すら感じさせながら大好きな冬を待っています(12~2月は音の透明感が増して何とも美しいと私は感じています)。
色々なことを経験し、これからはなるべく手を加えずにこのピアノがゆっくりと成長していく過程を楽しもうと決めてはいるものの、一つひとつの音、一本いっぽんの絃の響きに機械的に聞き耳を立ててしまうと「いいのかな?」と思う点もあります。ところが季節が変わったり、弾く人が変わったり、何よりも私自身が味わいながら聴くという心で接したりすると、不思議に不安は消え去り、ベヒシュタインというピアノに“一聴き惚れ”した最初の出会いの喜びに包まれるのです。私も少し成長したようです。
全ての楽器、特に木という生き続ける素材を使った楽器は同じモデルであっても個々に異なりますから、「A190が好き」とは言えませんが、「私はうちのA190が好き。このピアノに出会えてよかった、いい感じで一緒に生きています」と今思っています。隠れ家のようなスタジオにピアノを弾きに来てくださる方も少しずつ増えています。この3年、何かとバックアップしてくださったユーロピアノのスタッフの皆様の確かな専門的知識と柔らかな感性に感謝しつつ、これからのピアノと私の成長にも変わらぬご助力をお願いして拙い文を結びます。

ピアノスタジオ スペース オブバイフォー
納入ピアノ:ベヒシュタインA.190