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我が家の宝物(鴻巣市:前川様)


あれは1975年4月のことでした。
私の家族がロンドンに来て間もないころ、長女のピアノレッスンのためにピアノが必要ということでレンタルピアノを探していました。そこでピアノ教師から紹介されたのがサミュエル・ピアノ(ロンドンの老舗楽器店)でした。
家内と娘が連れ立って出かけ、手ごろなものがないか探していたところ、1台の中古アップライトが目に留まりました。古色蒼然としているけれどいかにも風格があり、試しに支配人に音を出してもらうと何ともいえない柔らかい心地よい豊かな気分になれる音色のピアノでした。家内も娘もすっかり気に入り、即座にこれにしようと決めました。支配人曰く「このピアノは車に例えるとロールスロイスですよ」。
さいわい帰国時の持ち帰り家財に制限がないことを思い出し、思い切って買うことにしました。
そのころ、ロイヤルアカデミーのピアノ科の奨学生だった友人のお嬢さんが、このピアノのことをさかんに羨ましがっていたのを思い出します。

あれから30年近くなり、娘たちもそれぞれ巣立っていきました。
このピアノにまつわる話は尽きませんが、定期調律のたびに言われたのは弦を張るピンの緩みが限界にきており、オーバーホールが必要とのことでした。確かに音も下がりやすくなり、音色も昔の面影をすっかり失っていました。なんとか当時の音を取り戻したいものだとベヒシュタインを扱っているところをインターネットで探したら「ユーロピアノ株式会社」があることが分かりました。さっそくコンタクトしてオーバーホールの相談をしたところ、実に親身になって全面的に修理を引き受けてくれました。そして半年後、昔の音が蘇りました。
親しいコーラス仲間とピアニストを招いて「ピアノ開き」をし、久しぶりにその音色に聴き惚れました。本当にあの支配人が言ったとおりの音だ…と満足しています。
近く、孫娘がピアノコンペティションに参加するため我が家に泊り込みに来ますが、おおいに弾いてもらいたいものです。

代々、娘から孫娘たちへと受け継がれるピアノであって欲しいと願っております。
修理ピアノ:ベヒシュタインV