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2007年11月23日

2007.11.23 小さな名器


先日ショールームにベヒシュタインの小型グランド・モデルSが入庫しました。
150センチ程で非常に小さく、小曲を弾くのに最適な感じがします。
かつてロンドンにベヒシュタインの工場があった時のもので、いろいろな資料が戦争で焼けたため、はっきりとした製造年がわかりません。70年くらいは経っていると思われるのですが、しっかりとした造りにさすがは堅牢なベヒシュタインだなと感心します。
今日はそのピアノの低音のダンパーを調整していました。V字型のダンパーフェルトで2本の弦を止めるのですが、音の止まりが左右均一になっていないものがあったからです。
ダンパーの調整は、自分がもっとも不得手とする工程で、非常に神経を使います。
音を出すことはすごく簡単なのですが、音を止める(しかも小さいフェルトで)ことはとても大変なことだと思います。故意に少し音を残すということはありますが、基本的に鍵盤を戻したら音は消えなければいけないので、フェルトの位置、角度、タイミングがすごく重要になってきます。どうやっていい音を出すか?ということが調律師にはまず求められますが、音をうまく消すということも当たり前のことながら求められます。

ピアニストにとって、鍵盤のタッチが一番重要なチェック箇所ですが、ペダル(ダンパー、ソステヌート、シフト)部分も同等に重要箇所だと思います。。その2箇所でしかピアニストは音をコントロールできないからです。
ベヒシュタインの弾き込みピアニストをされていた方が、「ベヒシュタインのペダルの踏み方は、8段階あります」とおっしゃっていましたが、本当に微妙な調整が必要だと思います。数をこなしていかなければ身に付かないことだと思うので、これからも常に心がけて調整に励みたいと思います。

2007年11月18日

2007.11.18 パリ音楽院イヴ・アンリ教授公開レッスンレポート

パリ音楽院で教鞭を取るかたわら、ピアニストとしても活躍中のイヴ・アンリ教授の公開レッスンが11月5日より東京ショールームで開催されています。
知的でダンディなアンリ教授のレッスンに受講者も興味津々。弾き手の表情、音が変化する様子に皆さん、驚かれていました。
最後にベヒシュタイン、プレイエル2台を使って小さなコンサート。

まずベヒシュタインでお得意のショパンの24の前奏曲抜粋を。次にプレイエルでラヴェルの「水の戯れ」「道化師の朝の歌」、最後にベヒシュタインでドビュッシーの「喜びの島」が演奏されました。
ピアノの性格に合わせた選曲が素晴らしく、定員をはるかに超えた聴衆からはため息が漏れていました。

アンコールには1900年製のベヒシュタインで、ショパンの晩年の傑作「子守唄」「舟歌」が弾かれました。綿密なアナリーゼの上に詩情が花開いたような、見事な演奏でした。

演奏後にはサイン会が開かれ、一人一人に名前と異なるメッセージを残してくださいました。

2007.11.18 大澤美穂ピアノリサイタル後記


11月16日に津田ホールでおこなわれた大澤美穂さんのリサイタルを聴きました。
今回のリサイタルはファースト・アルバム発売記念でしたが、リサイタル前にCDを聞かせていただいた時の第一印象は「なんて音がきれい」。リサイタルではそのことがよりダイレクトに感じられて、大澤さんのいきいきとした丁寧な演奏、吟味されたプログラム、ベヒシュタインというピアノの選択のすべてがみごとに調和したすばらしい演奏会でした。
終演後のロビーではCDの販売とサイン会が行われ、長蛇の列ができていました。
(東京ショールーム:阿部清美)

2007年11月08日

2007.11.08 公開レッスンにて


11/5にショールームで行われたイヴ・アンリ教授(パリ国立音楽院)の公開レッスンとコンサートは非常に盛況でした。
当初1930年代のプレイエルと、現在のプレイエルを弾きながらのレッスンを予定していたのですが、フランスからの輸入が遅れ、100年前のベヒシュタインVモデルとのレッスンになりました。

ピアノのことで心配をしていたのですが、さすがはパリ国立音楽院の教授、すぐにピアノになじんでいる様子でした。後で聞くと、アンリ教授自身1880年代のベヒシュタインのセミコンをお持ちとのこと。ショールームのVモデルについても、「とても貴重なものだ」とおっしゃっていました。

レッスン後のミニコンサートは,あまりの人数で立ち見もでてしまい、私は部屋の外で聴いていましたが、
ラヴェルの「道化師の朝の歌」が素晴らしかったです。プレイエルの軽やかな響きにこんなにも合うのか!と同僚と驚いていました。曲と楽器と弾く人、このマッチングがうまくいくと、ほんとに素晴らしい音楽になるのだなあと感心しました。

こういう貴重な体験ができるのは幸せなことですが、それを支える仕事に就いている者として、もっともっと勉強しなければいけないなあと思った一日でした。

2007年11月06日

懐の深さが自慢です

いわゆるポピュラー音楽の世界で「名曲」「名盤」とされている録音にベヒシュタインが関わっていることを、最近まで知りませんでした。
ロンドンの有名な録音スタジオTrident Studios(トライデント・スタジオ)。そこの「顔」であったのが黒いベヒシュタインのグランドピアノであったことは意外と知られていません。このピアノが置かれてたのが 1968年から1980年代中ごろ。ロンドンの楽器店サミュエルズからレンタルされ、デヴィッド・ボウイ、ビートルズ、クィーン、エルトン・ジョン、ジェネシス…etc.と大物ミュージシャンに使われました。特に有名なのが、クィーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」とビートルズの「ヘイ・ジュード」。フレディ・マーキュリーはツアーでもたびたびベヒシュタインを入れていたようです。
残念ながら1989年にサザビーズでオークションにかけられ、さらに1993年に所有者が変わりました。1994年にミラーズがこの楽器を再評価したところ、£15,000~18,000だったそうです。

2007年11月05日

2007.11.05 ルイ先生の新CD「夢のあとに」発売

ピティナのHP連載中「ルイのピアノ生活」でおなじみのルイ・レーリンク氏の新CDが発売されます。ルイ先生も所有されているドイツのベヒシュタイン、それにショパンが愛したピアノとして知られるプレイエルと、代表的なヨーロッパ・ピアノを使って録音された楽しいCDです。
このCDの白眉はショパンの遺作のノクターンとフォーレの「夢のあとに」を2台のピアノで入れているところ。同じ曲での録音ということで、両者の特長がはっきりと分かります。
東京ショールームでも取り扱っておりますので、ぜひお聴きになってください。

■使用ピアノ:ベヒシュタインD280/プレイエルP280
■レコーディング:東京芸術センター天空劇場
■製作:ムジカ・フマーナ・レコード
■価格:¥2,000(税込)
■収録曲(クリックすると拡大します)
1.ドビュッシー:沈める寺(Bechstein)
2.ショパン=リスト:乙女の願い(Pleyel)
3.バッハ=シロティ:プレリュード(Bechstein)
4.J.S.バッハ:イタリア協奏曲より第2楽章(Bechstein)
5.ラフマニノフ=コチシュ:ヴォカリーズ(Pleyel)
6.ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(Bechstein)
7.ショパン:英雄ポロネーズ(Pleyel)
8.ショパン:ノクターン遺作(Pleyel)
9.同上(Bechstein)
10.フォーレ=フィオレンティーノ:夢のあとに(Pleyel)
11.同上(Bechstein)
ルイ先生のコメント。クリックすると拡大します。

2007年11月03日

2007.11.03 名器ベヒシュタインE型の調律

今日は東京工業大学でコンサートがあるため、使用されるピアノの調律に行ってきました。
ベヒシュタインのE型フルコンサートグランドで、学内のコンサートで使用され、その渋い音色を響かせています。このピアノは私の先輩が修理したというのを聞いていたので、今日は調律をしながらじっくりと観察していました。国立大学や官公庁には明治期にドイツからかなりの数のベヒシュタインが納入されたと言われていますが、これもそんな1台です。

ハンマーや弦は新しいものに変えられていますが、アクション機構は昔のまま。非常に頑丈で長持ちしていると感心します。かなり古いピアノですが、それを本来の目的である演奏に使用し、そしてそれを自分が調律していることに感慨を覚えました。これを修理した先輩もさぞかし誇りに思っているでしょう。中音域のいぶし銀な響きは、現代のピアノにはなかなか求められないものです。

演奏される曲は、シューマン、ショパン、ドビュッシーなどで、どれもベヒシュタインの音色にマッチするだろうなと思いました。特にドビュッシーは自分も何曲か弾いたことがあるので、どういう弾き方、響かせ方をするのか興味があります。
古いピアノはペダルの感じが現代のものとかなり違うので、演奏者は慣れていないと難しいと聞きます。幸い今日の演奏者は、何回かこのピアノで練習をされているそうなので、その点は安心でした。

次回は12月に合唱の伴奏に使用されるとうかがっています。これからもずっと長く使用されるために、メンテナンスをしっかりしていきたいと思います。